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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1497号 判決 1950年11月24日

被告人

山田順福

主文

原判決を破棄する。

本件を原裁判所に差し戻す。

理由

弁護人坂本元一の控訴趣意第二点について。

原判決は証拠の標目として月岡寿男の盗難屆口頭録取書謄本(司法警察員作成)及び松本又蔵の盗難屆録取書謄本(司法警察員作成)を示している。之を原審公判調書で調べると検察官は検第二号として月岡寿男の口頭録取書検第七号として松本又蔵の盗難屆の証拠調を請求し被告人及び原審弁護人はその証拠調には意見なく之を証拠とすることに同意しており裁判官は夫々その証拠決定を宣し之を提出せしめ自ら証拠調をなした旨の記載がある。之によると検察官が証拠調の請求をなし裁判官が証拠調をしたものは孰れも原本であつたものと解するの外ない。尤も記録によると月岡寿男の盗難口頭録取書及び松本又蔵の盗難屆録取書は孰れも謄本が編綴されてあるが、刑事訴訟法第三百十条による謄本提出の許可のあつたことは認められない。孰れにしても公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは公判調書のみによつて、これを証明することができるような事項について公判調書以外の資料による反証を許さないから結局原審では右各謄本の証拠調べがなかつたものというの外なく、従つて原判決は証拠調をしなかつた証拠を証拠の標目に示し、本件罪となるべき事実の認定資料に供したことになる。即ち本件においては原判決は理由を附せず、又は理由にくいちがいがある違法があり、この点において破棄を免れぬ。而して訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠によつて当裁判所において直ちに判決をすることができるものと認められないので、量刑の点に関する控訴趣意に対する判断を省略し本件を原裁判所に差し戻すべきものとする。

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